リンク・イット・オール
「ただいまー」
靴がいくつも散らばった広い玄関に声をかける。
するとほどなくして奥の部屋のドアが開けられた。
「おかえり。そういえば真紘、さっき電話で聞きそびれちゃったけど、連れてくる友達って……」
そう言いながらこちらを見たのは、40代くらいの茶髪の女性。
恐らく真紘先輩のお母さんだろうその人は、真紘先輩によく似た目元をこちらへ向けて固まる。
そして目を丸くして驚くと、大きく息を吸った。
「お、女の子!!女の子ー!!ちょっとみんな来てー!集合ー!」
「うるさいし集合させなくていいし」
よほど珍しいことなのか。近くの階段に向かって声をあげる女性に、真紘先輩は気恥ずかしいのか苦笑いで叱る。
はっ、そうだ、ご挨拶!
私は慌てて頭を下げる。
「あっ、急にすみません!私、真紘先輩と同じ部活の百瀬悠と申しまして……」
「悠ちゃんね。初めまして、真紘の母です。うちの不良息子がいつもお世話になってますー」
「いえ!お世話になっているのは私の方で……!」
靴も脱がずにその場でぺこぺこと頭を下げていると、続いてドタドタと勢いのいい足音が二階から近づいてくるのが聞こえた。