リンク・イット・オール



「すみません……そうじゃないんです。亡くなった母のお味噌汁の味に似ていて、とても美味しくて」



つい本音をポロっとこぼしてしまってから、いきなり亡くなった家族の話だなんて空気を悪くしてしまっただろうかとハッとした。

けれど、顔を上げると目の前に座る真紘先輩のお母さんはにこりと微笑む。



「子供がお母さんの味をちゃんと覚えているなんて、お母さん幸せ者ね」

「幸せ者……ですか?」

「ごはんなんて毎日作って食べての繰り返しで、それが当たり前だから印象に残らないことがほとんどだもの」



当たり前のこと。

……確かに、お母さんが今も普通に生きていたら、私はきっとなんとも思わなかったかもしれない。


特に印象にも残らない、なにげないこと。

だけど今こうして、はっきりと自分の中にその面影が残っている。



「それを覚えて体に刻んでくれるのは、作る側にとって嬉しいことよ」



それは、お母さんにとって嬉しいこと。



自分を認めてくれる言葉にまた泣きそうになってしまうのをぐっと堪える。

すると黙って見守っていた真紘先輩は、ぽんぽんと優しく頭を撫でてくれた。



そんな私たちを微笑ましそうに見るお母さんは、思いついたように言う。


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