初恋レモン
「大丈夫だよ!ほら!」


レモンを俺に見せて
満面の笑みを浮かべる女の子に、
俺は恋に落ちた。


子供ながらに胸がときめいたんだ。


ひょいっと
木から降りようとする女の子を見ていると


「こら!菜々!登っちゃダメって
何回言ったら分かるのよ~!」


叱るような女の人の声が聞こえてきた。


「あちゃ!見つかった!!
逃げよう!!」


しまったという表情の女の子は
俺の手を握って走り出した。


繋いだ手はお互い同じような大きさで、
冷たいのに、どこか安心感を覚えた。


夢中で走ってたどり着いたのは
海辺だった。


「はぁ~!疲れた!」


えへへと無邪気に笑う女の子に
また胸を打たれた。
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