冬の魔法
緑と黒の魔法使い
街の中心部に建つ魔法学校の敷地内にある魔法図書館。その図書館の出入口で、黒で統一された制服に身を包み、本を抱えている私は立ち止まっていた。私の名前は、若竹 氷翠(わかたけ ひすい)。魔法学校の2年生だ。

強く吹いた風が、私が着ている白いシャツの胸元に結ばれた赤いリボンを揺らす。深呼吸をし、私は図書館の中に入った。

「司書さん?」

いつもなら、出入口付近にいるはずの司書さんが居ない。

私は、深いため息を吐きながら「仕方ないな…」と呟き、本と貸出の紙に魔法をかけた。本は元のあった位置に飛んでいき、紙は「返却済み」と書かれたカゴの中に入っていく。

「すごいね!その魔法、上級者向けのでしょ?若竹さん」

後ろから、誰かの声が聞こえる。振り返ると、私とあまり身長が変わらない男の子が、笑顔を私に向けて立っていた。見たことはある気がするが、名前までは、覚えていない。

「誰…?」

「…覚えてないの?」

「ごめん、他人には興味無いから」

「僕は、近藤 美影(こんどう みかげ)って言うんだ」

私はその名前を聞いて、そういえば…と思い出した。

「あぁ…私と同じクラスの…」

「そうそう!すごいよね~…若竹さんは――」

「あのさ」と、美影の話を遮るかのように私は、話し始めた。

「…私、早く帰りたいの。そこ、邪魔なんだけど」

図書館の出入口を塞ぐように立っている美影に向かって、冷たく言い放つ。

「…そうだね、ごめん」

美影の寂しそうな顔が、私の胸を痛める。その感覚に、私は違和感を覚える。

「じゃあね!また明日~」と手を振りながら、笑顔で図書館を出ていく美影。

「意味が分からない」と吐き捨てるかのように呟きながら、私は図書館を出た。
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