楠社長のお気に入り
突然室内に響き渡るアラーム。そのアラームの意味を知ってか、零さんはムスッとしてしまった。


「零さんこのアラームって…」


「社長お時間です」


「わかってるよ」


零さんはごめんねと謝ると、腰に回していた手を離した。もしかしてこれから仕事なのかも。それならさっさと帰ったほうがいいよね。


「それじゃあ、書類もお渡ししましたし私はこれで。お茶ありがとうございました」


お辞儀をして社長室を出ようとすると、零さんに腕を捕まれた。


「これから会食で俺も出るから待って。送ってく」


「えっ…で、でも…申し訳ない…」


「ここは素直にありがとうって言えばいいんですよ。三月様の貴重なお時間を頂いてしまったのは私達なんですから。それではお車を取りに行きますので失礼します」


パタンっと扉が閉まり、零さんと二人きりになってしまった。というか、私が二人の貴重なお時間を貰っちゃったような気もするんだけど。


「あの、ありがとうございます。お茶まで頂いたのに…」


「別にいいよ。それに邪な気持ちもあるし」


「邪な気持ち??」


「送ったら、まゆの住んでる場所わかるでしょ?」


だから怖いって!!零さんこのままストーカーにならないよね??なんか不安…。


「はははっ、まゆってわかりやすいよね。顔強ばってる。まぁ、安心してよ。ストーカーにはならないから。幹が見張ってるし」


いや…その言い方だと、幹さんがいなかったらストーカーになるよとも取れるんですが…。






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