楠社長のお気に入り
「あ、そうだ。まゆ、スマホ出して」


「スマホですか?」


スマホを鞄から出すと、零さんに取られてしまった。これはもしかして…。


「はい。俺の連絡先入れといたから、いつでも連絡して。もちろんデートのお誘いも大歓迎だから」


LINE画面を見ると楠零の文字。これって…どう見てもプライベートだよね?


「あの…零さんいいんですか?ただのカフェ店員にプライベートの連絡先教えても…」


「ただの店員じゃないよ…」


零さんはフワッと幸せそうな笑顔で私を見つめる。きっと、今の零さんを見たらたくさんの女性が目を奪われる。でも彼をそんな笑顔にさせてるのは私なんだって、胸がキュッと締め付けられる。


「まゆは俺の好きな人」


誰か…恋愛経験0の私に教えてください。こんな簡単に恋というのは始まるものなのでしょうか?


もっとこの笑顔を見ていたい…もっと零さんを笑顔にしたいって思っちゃう。告白を断るつもりだったのに…こんな短時間でこんな気持ちになるなんて…。


「そ、そうですか…」


恥ずかしくなって俯いてしまった。どうしたらいいのかわからず、ギュッとスマホを強く握ると零さんが顔を覗いてきた。


ーっ!?


思わず後退りしてしまう。


「まゆ?顔赤…」


「あ…やっ…その…」


何か言わないと。でも何て言ったらいいの?どうしよう…零さんに変に思われちゃう。


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