楠社長のお気に入り
『はい、佐伯です。三月様いかがなされましたか?』


「お仕事中でしたら申し訳ございません。あの…今近くに零さんはいらっしゃいますか?」


『いえ。本日私は休暇をいただいておりますので、社長はいらっしゃいませんが』


中学からの仲と言っていた幹さんなら、零さんの好みを知っているんじゃないかと思って連絡をしたんだけど、幸い零さんはいないみたい。良かった…。


「あ、あの。零さんからデートに誘われて…。それで初めてのデートなので何かあげたいなと思ったんですけど、私零さんの好み知らなくて。ずるいとは思ったんですけど幹さんに知ってたら教えてもらおうかと…」


『…………………………』


幹さん黙っちゃった…。やっぱりこんなずるいマネしちゃ駄目だよね…。


「あ、あの、やっぱり…」


『事情はわかりました。三月様この後お時間ございますか?』


「は、はい。バイトもないので私は…」


『もしよろしければ、これから社長へのプレゼントを買いに行きませんか?言葉で伝えるよりも実物を見ながらのほうがわかりやすいと思いますので』


確かに今聞いても、いざ探しに行ったとき一人で悩むかも。


「よろしくお願いします!」


『それでは14時頃にお迎えにあがります』


電話を切って、さっそく準備を始める。お父さん以外の男の人にプレゼントを渡すのが初めての私は幹さんが来るまでずっとワクワクしていた。




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