楠社長のお気に入り
「あっ、零さんへのプレゼントこれにしようかな」


手に取ったのは、くまさんのリモコン立て。くまさんが座っている切り株が倒れないようにと台座になっていて、両手をマジックテープで止めると、リモコンを抱いてるように見えてすごい可愛い。


「でも男の人にこれってダメかなぁ?どう思いますか?」


幹さんを見ると、口を手で押さえながら笑いを堪えてた。


「笑うほどダメですか…」


「い、いえ…。ダメとかではなく…。想像したらおかしくて…。まゆさん、そちらに決めましょう。絶対喜びますよ」


すごい笑われたのに、これでいいの?うーん。何を想像して笑ったのかはわからないけど、幹さんも決めようって言ってくれてるし…。よし!これにしよう!!


「幹さん、これにします!お会計してきますね!」


レジに向かう私を見送り、一人になった幹さんは


「あいつがあのくまをどう使うかすげぇ楽しみだな。にしてもほんと面白いわあの子…」


と同じ商品を手に取りながら呟いた。


お会計を済ませ、この後お礼にお茶をと思ったんだけど、あまり長く一緒にいるのは社長に悪いからと断られてしまった。他に行きたい場所もなく、幹さんに家まで送ってもらいそのまま別れた。幹さんの姿が見えなくなったのを確認してから家に入り、テーブルの上にプレゼントを置いて椅子に腰かけた。


「零さん、プレゼント渡したらどんな顔するかな?ふふっ、デート楽しみだなぁ」


それから私は飽きることなく、プレゼントをずっと眺めていた。






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