楠社長のお気に入り
恥ずかしくなって俯くと、幹さんに爆笑された。


「はははははははっ!!確かに…恋愛要素あったけど…ははっ、ときめきはしないだろ!はははっ!!恋愛映画じゃねぇっつーの」


「そんなのわかってますよ!!でも自分を殺そうとしてる相手が急に助けたりしたらときめきませんか!?」


ゾンビナースと覆面殺人鬼に挟まれて絶対絶命のヒロインが死を覚悟した時に、斧を振りかざしてゾンビナースの腕を切り落とすあのシーンはドキドキしたなぁ!!


「この映画でそんな感情持つのはあんただけだよ。あー、久しぶりにすげー笑った」


幹さんは目に溜まった涙を拭って、映画に目線を戻した。


そういえばこの家に来てから、幹さんに一度も名前を呼んでもらってないや。


「あの幹さん…」


「なに?」


「もう名前で呼んでもらえないんでしょうか?」


そう聞くと、幹さんは少し考えて口を開いた。


「三月様?」


「違います!」


「まゆさん?」


「…………それ秘書モードの時じゃないですか」


どうせなら素の幹さんで呼んでもらいたかったんだけど、さすがにだめか。


「……………………ゆ……」


「え?」


今…名前呼んでくれた?


「幹さ…「まゆすけ」」


え?まゆ…すけ…??



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