楠社長のお気に入り
「まゆ、部屋にいないと思ったらここにいたのか」


「零さん!お仕事お疲れ様です」


「ありがとう。にしてもソファーの端と端って…。幹、まゆはそこら辺の女とは違うんだからもう少し…」


零さんがそう言えば、目の前のリモコンでテレビの電源を消し、ソファーから立ち上がる。


「これでも妥協した方だから。こいつを甘やかすのは良いが、俺は甘やかすつもりはないからな。映画終わったし部屋に戻る」


チラッと私を見て、怪しげな笑みを向けるとリビングを出ていった。


「はぁ…。ほんとごめん。幹があんなんで」


「いえ。それでもこの家にいてもいいと許可を頂けたので。あと、共通の好きなものがありましたし」


「それでここにいたのか。律儀だね。まゆは。コーヒー飲む?」


キッチンに向かう零さんに頂きますと言うと、コーヒーの入ったカップを二つ持って、私の隣に腰をおろした。


「ありがとうございます…」


「いいえ。そういえば、共通の好きなものって幹が観てたあの映画?」


「は、はい!私、あの映画が上映してた期間毎日映画館に通ってまして、だから幹さんもこの映画が好きだと知って嬉しくて。DVDも出てたんですね!初めて知りました!!」


さっきまで観ていた映画の話題が嬉しくて、零さんに話していると、スッと手が延びてきて頭を撫でられた。



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