シュガーとアップル




城下で最も栄えるだけあって、商店街に並ぶ食材の中には見たことがない果実や魚が多い。カフェの外装や道行く人のファッション、どれも最先端のデザインで、下町暮らしのハンナには新鮮なものばかりだ。


小物アクセサリーを専門に扱う店は、探すまでもなく至る所にあった。似たような店がいくつも競うように軒を連ねているのだ。

ハンナよりはるかに年上の貴婦人たちが店前で談笑しあっているのを見ると、どこも富裕層をターゲットにしたお高めの店舗が多いらしい。

辛うじてまだ一般客向けの雑貨店を見つけ、ハンナは店頭のガラス窓から中を覗いてみる。

店内には香水などのコスメ品が、宝石のような輝きを放ちながらずらりと並んでいた。

コスメに限らず指輪やイヤリング、ぬいぐるみやクッションなども置かれている。

今日の目当てのリボンも当然あったが、赤どころではなく橙色やクリーム色や藍色紫色……、膨大な量が所狭しと並んでいた。目がチカチカして何度も瞬きを繰り返してしまう。

量と輝きに気圧されながらも、乙女心をくすぐる宝石を前にハンナの心は浮き足立った。

チラリと見えた値札を見てもまだ少し値が張るが、見るだけならばタダである。


(ちょっとだけ覗いてみようかな)


ハンナは意を決して店のドアノブに手をかけた。


ーーと、こちらが引くより前に、開いた扉から出てきた女性客とぶつかりそうになる。

慌てて壁に身を寄せて道を譲るが、見ればハンナとほぼ同年代と思われる少女たちだ。

すれ違い様ふわりと、砂糖菓子のような甘い香りが鼻をかすめた。

両手にはいっぱいの買い物袋。その袋の量も気になったが、ハンナはそれよりも彼女たちの服装に目を奪われた。


(わあ、さすが都会…! みんな今流行のファッションだ。可愛いワンピースを着てる人たちばっかり)

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