シュガーとアップル


皆一様に華やかなドレスやワンピースで着飾っていて、年が近いようでみな大人のように見えた。

ドレスの裾や袖口にふんだんにあしらわれたレースやフリル。踵の高い編み目のブーツ。首元や指先で光るジュエリー。彼女たちが歩くたびにレースがふわりふわりと揺れる。
最近の流行はパステル色のレースなのだろうか?

いいなあと、憧れの眼差しで彼女たちを見送り、ふと自分の姿を見下ろしてみる。


(…私の格好って明らかに庶民的だよね)


ハンナの今日の服装は、はたから見れば完全なる普段着だ。

膝が隠れるくらいの長さの、薄いベージュのワンピース。髪の色と似た茶色のタイツに、低いヒールの灰色のブーツという、10代の若々しさなど皆無の枯れきった色合い。ワンピースにはフリルもなにもない。かろうじて袖口が少し膨らんだパフスリーブになっているのが、唯一しゃれているといったところだろう。

実はこれでも家にあるマシな服を選んできたつもりなのだ。

自分の持っている衣服のバリエーションなどたかが知れているけれど、このベージュのワンピースは1年前にハンナがこの商店街で初めて買ったものだ。
一目惚れで衝動買い。
持っている服の中で一番値が高いし、一番見栄えがいい。

けれどもこの街を歩くにはやはり今ひとつ華がなかった。


周りを見渡してみると、この大通りにいる者の大半は高貴な身分と思われる者たちばかりだ。

城下町の中心部だから人が集まりやすいという理由もあるが、高級層の人間が多いのは、この商店街が上流階級区と隣接した位置にあるからだろう。

天幕がひしめき合う大通りを東に外れるとすぐに、貴族たちの豪奢な屋敷が立ち並ぶ高級住宅街だ。


裕福な家柄の令嬢や令息が最も気軽に、存分に楽しめる商店街。もちろん一般市民も大勢利用しているが、それなりにみすぼらしく見えないようにおしゃれを決め込んでくるのが当たり前。


ハンナはガラス越しのキラキラした店内を見、もう一度己の姿を見下ろす。

…どう見ても場違いだ。


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