シュガーとアップル
棒立ちのハンナに伯爵は数多くある赤いリボンをつけてはやめ、つけてはやめ、真剣に見分している。
やがてひとつの大きめな赤いリボンを選んで、ハンナの髪にそえる。真剣な青い瞳がハンナの顔を真っ直ぐ見つめてくる。
(ち、近い…それになにかいい香りがする。伯爵さまの衣服から? それとも綺麗な髪からかな。…この香りなんだか落ち着く……って私ってば何考えてるの!)
ハンナが己の煩悩と葛藤し続ける中、伯爵は顎に手をやってじっと悩んでいる。
「………よし、これにしよう」
伯爵に促され雑貨の隙間にある鏡を覗き込んでみる。
今までつけていたリボンよりふた回りほども大きい。白いレースの刺繍が一部に施され、シンプルすぎず派手すぎず、上品でバランスのいいデザインのリボンだ。
(かわいい……!)
ハンナは一目でこのリボンを気に入った。
これ以外のリボンを見たところでハンナには今ほど魅力を感じるものはないだろうと思った。
なにより伯爵が自分のためだけに選んでくれたものだ。
興奮を隠しきれずハンナの頰が紅潮するのを見て、一緒に鏡を覗き込んでいた伯爵がくすりと笑う。
「気に入ってくれた?」
「はい、すごく…!」
「よかった」