敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「前に暁斗から聞いた。観覧車に乗ったらキスしないと女は怒るって」
「社長が……。まあ、確かにデートで乗ったら期待はするかもしれないですけど怒りはしないかと……」
「そうなのか」
納得したのかしないのか、窓の外へ視線を向けたその表情に変化はない。
でもやっぱり室長は恋愛絡みのことには疎いような気がしてならない。
女性と関係を持ったことは多々あるけれど、そこに至るまでに本当はかかる経緯を経ていないからというか。
一夜限りの関係をいくつ重ねても恋愛をしたことにはならないと思うし。
「室長って、今までデートとかしたことありますか?」
「……お察しの通り、ないよ」
室長はムスッとした表情で、吐き捨てるようにそう言った。
「あの……怒ってます?」
「怒ってるというか、自分に呆れてる」
そう言って深いため息をつく室長は苦笑いを浮かべ、私に同意を求めるような目を向ける。
「自分のこれまでの行いのツケが回ってきたなって思ってさ。まともに付き合った経験がないから、どうしたら君が喜んでくれるのかがわからなくてイライラするんだ」
「え……」
室長は、仕事では何でもそつなくこなして、そこらをただ歩いていても人目を引くような容姿で、隣を歩けるだけでもドキドキするような人なのに。