敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
私を喜ばせる方法がわからなくてイライラするだなんて、なんて殺し文句なんだろう。
しかもそれを計算じゃなく本気でそう思ってぼやいている姿が可愛い、なんて言ったらますます落ち込むのかもしれないけど。
「私、いま楽しいですよ? 室長とこうして観覧車に乗れたこととか……、その、私のことで悩んでくださったことが嬉しいです。それに、そういう完璧じゃない室長は、可愛いと思います……」
満たされているという想いを伝えたくて、室長の手を取り両手でぎゅっと握り、真っ直ぐな視線を向けて伝える。
けれど室長は反応もなく私を見つめて黙ったまま。
「……可愛いなんて言ってごめんなさい……。怒ってますか……?」
やっぱり可愛いなんて室長にとっては不本意な褒め言葉なのかもしれない。
少し調子に乗りすぎたかも、と心配になってくる。
すると室長は少し間をおいて、ふっと息を吐き、力が抜けたように笑った。
「……可愛いのは君の方だ」
室長はそう言って私の両手の上に手を重ね、顔を傾け距離を無くしてくる。
しっとりとした柔らかな感触が掠めるように唇に触れ、名残惜しさを感じさせた。