敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「……呆れるだろうと思ってたのに。ただ、俺の何が可愛いのかは全くわからないが」


室長は私に触れるか触れないかの軽いキスをした後、考え込むような表情でさも不思議そうにそう話す。


「ふふ、そういうところですよ。いいんです、室長はわからなくても。私が勝手に思ってるだけです」


心からの笑顔、というものはどうやったら見せられるのかわからないけど、精一杯室長への想いも込めて笑って見せる。


「……俺は君の笑った顔が最高に可愛いと思う。それに、一人で小躍りしてる姿もね」


室長は意地悪そうな笑みを浮かべ、からかうような口調でそう言った。

小躍り、というのは紛れもなく室長に目撃された私の恥ずかしい姿なんだけど。

あれを見られて引かれこそすれ、可愛いと思われるとは夢にも思っていなかったので、どう感じるかはその人次第なんだなとつくづく思う。


「あんなの見たら引く人の方が多いですよ」

「そうかな。ギャップ萌えっていうだろ?」

「室長の口から萌えなんて言葉が出てくる方がギャップ萌えですよ」

「ああ、俺は何考えてるかわからないって言われてるみたいだからね。俺のこと、鉄仮面って呼んでるんだろ?」


室長がしれっとそう放ち、ギクッとして一瞬体が固まってしまった。

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