敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
最終章
週明けの月曜。
久々に朝日が眩しくなるほどの寝不足に陥った。
室長と初めての夜を過ごしたというのに、幸福感は私の元には欠片ほどしか残っていない。
というのも大阪からは別々で帰ったし、電話が来るかと思ったけど来なかったし。
室長とはホテルで別れてから話していないのだ。
そもそもこの週末は色んなことが起きすぎだ。
室長とのことはともかく、常務からのアプローチがすごくて、考えなきゃいけないことや聞かなきゃいけないことが次から次へと湧いてきたから。
でも、とりあえず真っ先に聞きたいのはーー
「室長、少しお時間よろしいでしょうか」
朝礼を終え、執務室に戻る背中を引き留める。
振り返った室長は、いつも通りの上司の顔で「いいですよ」とあっさり答えた。
大阪での一夜は私の夢だった? と思うほどに変わらない室長の態度に、何か特別なことを期待していた訳じゃないけど、ちょっとがっかりする。
室長の後について執務室に入ると、他に誰かいるわけじゃないのに「どうぞ」とソファに座るよう促された。
何だかよそよそしいという気がするけど、会社ではこんなものなのかな。
でも、私たちは結婚するのに。
帰ったらうちに挨拶にも行くって言ってくれたし、夢じゃなくて現実なのは間違いないはずなんだけど。