敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「君がそんなに難しい顔をしなくてもいい。君に話を聞かれたのは俺達にも落ち度はあったし、元を辿れば俺に興味を持つような真似をしてしまった俺が一番悪いんだ」
「……そんなことないです。人のプライベートを覗き見しようなんて浅はかな考えを持った私が悪いと思います」
聞いてはいけないことを興味本位で聞いてしまったくせに、秘書として残りたいなんて訴えてしまったことを激しく後悔した。
つくづく自分の言動や行動の浅さに嫌気がさした。
「ほら、そこは君の悪い癖だ。自分を追い込もうとしなくていい。ミスをしない人間はいない。君はこれまでもミスをした時には皆に迷惑をかけたと言って思い詰めた顔をしていた」
「それは私のせいで起きたミスですし、責任を感じるのは当然かと……」
「もちろん責任を感じるべきとは思うし、むしろ感じてもらわなきゃ困る。でも君はそれが行き過ぎる節がある。まるで次にミスをしたら後がない、そんな風に思い詰めているだろう?」
「はい……」
ずっと秘書でいたいから。
これ以上のミスは避けなければ、といわば常に背水の陣で挑むような心境だったと思う。
「人間なんだから悩みがあったり感情が不安定だとミスを起こしやすい。だから仕事ではあるが必要以上に気を張らずにいてほしい、と俺は思う」
そう言って室長はグラスを手にして口をつける。
見てないようで見てるんだなあ、と改めて室長の能力の高さを垣間見た気がする。