敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「1つ確認したいんだが」
「はい。何でしょうか」
「君は何故秘書にこだわるのかな」
「それは……昔から憧れていた職業でもありますし……。それに……」
「それに?」
「……それに、色々な御縁に巡り会うことができると思うからです」
「それ、玉の輿狙いってやつ?」
「玉の輿までとは言いませんけど、収入が安定してる真面目で素敵な人と出会える機会が多いんじゃないかと思って」
「……真面目で素敵、ね……」
「頭悪い理由だな、って思ってます?」
「いや」
「ふふっ、いいですよ、自分でもそう思います。だけど私の母が父のことですごく苦労してきて。今時珍しい話でもないんですけど、借金作って消えちゃった、みたいな」
室長相手になんでこんな話になっているのか。
でも私が秘書にこだわる理由はこれが一番の理由だから。
「お金はないよりある方がいい、っていつしか思うようになった時、じゃあそんな人と出会うためには秘書がいいかな、ということです。すみません、こんな理由で」
さすがに呆れたかな、と思いつつ室長の様子を窺うと不意にこちらへ視線を向けた室長と目が合った。
切れ長の目が素敵だと、そう思ったことがあったことを思い出す。
その頃を思うと、今こうして二人で並んでお酒を飲んでいるなんて夢みたいだ。
まあこういう状況になった経緯は決して喜ぶべきものではないけど。