敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「別にいいんじゃないか?どんな理由だろうと君が努力を重ねた結果が今の地位だ。君がこなしてる仕事は決して誰でも務まるようなものじゃない。努力の賜物だよ。自分を卑下するな」
「っ……」
ああ、なんでこの人は私が欲しい言葉をこうも簡単に口にすることが出来るんだろう。
玉の輿狙いのような邪な理由を、秘書であるために努力してるならいいと肯定してくれる、そんな言葉をずっと待ってた気さえする。
「……もう……ホント、室長って泣かせるの上手すぎですよ……」
「違うな。今の君の涙腺が緩いだけだ」
そう言って室長は僅かに零れる私の涙を指で拭う。
温かな指先に胸が高鳴り、あり得ないほどドキドキと音を打ち鳴らしていく。
「君が秘書でいたい理由はよくわかった。だから君にはこのまま秘書室にいてもらいたいが、それは俺達がーー、暁斗が社長であることが前提なんだ」
「……前提って、社長はまだお若くて就任されたばかりで……」
「それだよ。就任したばかりでまだ社内にも社外にも敵が多いんだ。特に、母方の実家がとにかく邪魔でね」
「ご実家……ですか?」