敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「ちなみに君は玉の輿に乗るだけじゃなく、愛がなきゃ嫌とか思うタイプかい?」
「そ、それはどうだろう……。あればいいとは思いますけど……」
「じゃあ玉の輿に乗れたらOK?浮気も許す?」
「それも違うような」
「はは、わがままだな。でも愛情を知らない男もいる。そういう奴が相手なら君はどうする?」
「え、どうだろう……少しずつ、歩み寄れたらとは、思いますが……」
室長からの質問は段々具体的になってきて、まるで特定の誰かのことを指しているような、そんな気がし始めた時。
「そう。じゃあ、俺でいいだろう?」
「え?」
「俺も一応、存在を隠してはいるが会長の息子だから財産は持ってる。今の地位は室長だし、そこらの奴より収入はいい。それに浮気もしない。そもそも女に執着したこともない」
「え、え、ちょ……」
「とりあえず俺と婚約して、入籍するまでに俺より好条件の男が見つかればそっちを紹介する、でどうだろう。君は秘密を黙っているだけで玉の輿に乗れるわけだ。最低でも俺という玉の輿にね」
それって最高っていうのでは?
と思ったけど口には出さなかった。
とにかく室長の言う『保険』があまりに豪華すぎて嘘だよね、と疑う気持ちの方が断然大きく提案を飲み込める気がしない。