敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
4章 獣な上司

それで結局、フィアンセになったところで何がどう変わるんだろ。
ていうか、こんな出来すぎな話、あり得なくない?

朝目が覚めて、真っ先に思い浮かんだのがそれ。

イケメン極まりない室長とキスしてドキドキしたまま帰ってきたのはいいけれど、ふと我に返るとモノで釣られたというかキスで釣られただけでしょというやつで。

秘書の仕事をこれからも続けたいなら、とか今後の会社の体制次第で云々、と不安材料を刷り込まれ、体のよい口封じをされただけ、みたいな。

それに『保険』ってなに。
いや、よく漫画やドラマじゃ聞きますよ?
この先もし嫁の貰い手がなかったら俺がもらってやるよ的な。

でもそれってそこに愛のある話だから成り立つ訳で。
愛がないなら、ただからかってみただけになるんじゃないの?


「え?歓迎会、じゃないんですか?」

「そうよ、歓迎会よ。だけど初めて会う人がほとんど、というだけ」

「は、はあ……」


いつものごとく阿川さんに誘われ、社食でのランチ。
普段は周辺のカフェに行くことが多いけど、今日は天気がよくないからと社食へ来ている。

ウチの社食はそこらのレストランばりにメニューは豊富だし美味しくてリーズナブルなので、私は一人でランチの時はほとんど社食派だったりする。

だけど阿川さんは外に出た方が出会いもあるじゃない、と常に前向きな狩人なので、いついかなる時も出会いを求めて社食はほとんど利用しない。
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