敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~


「あの、佐伯さんは合コンだって知ってるんですか?」

「ううん、知らないわ。向こうの幹事に、新しく入った子がいるの、って話したらじゃあ歓迎会にして、ビックリさせようって言われて。そういうサプライズもありかなと思って」


そう言って阿川さんは麗しく笑うけど、歓迎会だと誘われて参加する佐伯さんは、実は合コンでした、と言われたらどんな反応をするだろう。
阿川さんの主催だし、たとえ嫌でも中々言えるものでもないだろうし。
サプライズを楽しんでくれる子だといいけど。


「あ、でもね、ちゃんと聞いたの。彼氏はいないって言ってたわ」

「そこは聞いてあるんですか。さすが」

「さすがにそこは聞かなきゃね。あとは週末に予定外のスケジュールが入らないことを祈るわ」

「そうですね……。残業は避けたいですよね」


今回の合コンも阿川さんの知り合いなら間違いなくレベルの高い人達が来るはずだし、きっと楽しめるはず、なんだけど。

頭によぎる室長の顔。

一夜明けて冷静になればなるほど婚約とか絶対おかしいと思えてきて。
プライベートの室長は少し意地悪というか、そんな感じだったのでからかわれているという可能性が拭えない。

だから考えれば考えるほど昨日の出来事は夢としか思えなくなっていた。


「今日、室長っていつ戻るんですかね」

「やだわ、せっかく楽しい事考えてたのにあいつの話聞いただけで吐きそう」

「ふふ、ごめんなさい」

「鉄仮面はもう執務室にいるんじゃない?今日はこのあと社長の外出はなかったはずよ。何、あいつに文句でも言うの?」

「違います、その、お休みの相談をしようかな、と……」


やっぱり改めて確かめた方がいい。
私は絶対、騙されてる、そうとしか思えない。

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