敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「結局、誰でもいいのは君の方だ。条件が揃っていれば誰でもいいんだから」

「そ、それはそうかも……」

「まあ俺にも君と婚約するメリットはあるからね。とりあえず1年経って、他に誰もいなければ俺と結婚したらいいさ」

「したらいいさって簡単に言いますね……。でも室長のメリットってなんですか?」

「ああ、相手は自分で選んだ、って思えることだよ。誰かに決められた訳じゃないって納得できる」


室長の話を聞いて、ちくん、と胸が痛む。
結婚って何なのかな、と今さらだけど考えさせられる。

好きなだけで出来るものじゃないんだからと、心のどこかで自分を肯定している。

室長も私を好きとかそういう気持ちはなく、ただ条件がいいから、悪くないから私を選んだだけ。

そのことがやっぱりモヤッと心に薄く影を落とす。


「どう、登録出来たか?」

「あっ、はい」

「君のは今ないだろう?後でかけておく」


そう言って室長は私からスマホを受け取り、机の上に置いたけど。
腰に回された腕はそのままで、離してくれる気配がない。


「あ、あの、室長、お仕事のお邪魔してごめんなさい。私そろそろ……」

「何言ってる。この体勢で何もしないで帰す訳ないだろう?」

「っ……!」


腰に回された腕に力が入ってぐっと引き寄せられた途端、唇が重ねられる。

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