敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「ぁ……、んっ……」


突然の出来事に呆気にとられて薄く開いたままだった唇に室長の舌先が容赦なく侵入し、強引に口内を蹂躙している。

舌先が奏でる濡れた音が耳を犯して身体を震わせ、おそるおそる情熱的なキスに応えれば、頭の後ろに手が回されてこれだけでは終われないキスに変わっていく。


「あの、室長……、えっ……」


腰を抱えられたと思った次の瞬間には机の上に押し倒されていた。

真上から見下ろす室長の情欲の籠った目が私を射るかのように注がれ、胸がドキドキを通り越してドクドクと激しく打ち鳴らされている。


「俺は薄情だから結婚には向かない。だが相手を不幸にはしたくないから浮気はしない。婚約中も同様だ。だから俺の欲求を解消できるのは君しかいないんだ」


さも当然の権利であるかのように、切羽詰まった様子でそう訴える室長につい流されてしまいそうにはなるけれど。


「ちょ、ちょっと待ってください、そんなこと言われても……っ、あっ……ダメ……」


シャツ越しの引き締まった胸板を押し返してもびくともせず、室長は私の首筋に顔を埋めたまま、右手を私の太股に伸ばし、スカートの中へと侵入しようとしてくる。


「ダメです!誰か来ちゃいますってば……!」

「来ない。誰も来ない。大丈夫だここではしない。君の声がもう少し聞きたいだけだ」


執務机の上で室長との攻防戦を繰り広げていると、コンコン、とドアをノックする音が聞こえ、返事もしないうちにドアが開いてーー。

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