敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
5章 恋人と呼べる関係
11月に入るとそろそろ師走の足音が聞こえることも相まって、12月へ向けての新商品発表会への招待も多く、雑務ではお歳暮の下調べなどが入ってきて、何かしら慌ただしく日々の業務をこなす日が続く。
そんな背景もあって、室長に『恋人』宣言されて舞い上がったのもつかの間、私も外出が続いたり、室長は各地へ視察や挨拶回りに奔走する社長に同行するため、出張などで不在であることが多くなって、完全にすれ違ってしまっていた。
「七海ちゃん、お疲れ様」
「お疲れ様です。只今戻りました……って、阿川さんこれからまた外出ですか?」
「そうなの。もしかしたら直帰にさせてもらうかもしれないわ」
「わかりました。気を付けて」
私は今日は風邪でお休みになった先輩が担当するはずだった常務に急遽同行して、お昼をとうに過ぎた今やっと戻ってきたところ。
どうも社内ではたちの悪い風邪が流行っているらしく、秘書室でも2名の欠勤が出ているため、必然的に残りの秘書の仕事量は増える。
いつもは気品に溢れ優雅な身のこなしの阿川さんでさえ、戻ってきたと思ったらこうしてまたすぐに外出と、バタバタと慌ただしく駆けずり回っているようだ。
そして私に割り振られた同行は今日はこれで終わり。
この後はメール整理と書類の翻訳、先輩達から託された溜まりにたまった雑務をこなす鬼のデスクワークが待っている。