ボクは初恋をまだ、知らない。
皆でダンスチームを組んでから、
数週間過ぎた。
2月22日。今日はボクの誕生日だ。

「誕生日おめでとう。大事に使いなさいね」

プレゼント包装された、
念願のミシンを母さんから手渡されて、
ボクは早速リボンを解いて中身を出した。

箱から出したミシンは、
母さんが持ってる古い型とは正反対の
最新モデルだった。

「え……っ!?母さん、これ何か
ハイテクぢゃない?」

値段にも機能性にも、
気になる事がいっぱいでドキドキした。
母さんはドヤ顔して言った。

「最近の千影、よく笑うようになったわね。
勉強も頑張ってるみたいだし、
母さんからのご褒美よ!」

「……ありがとう、母さん。」

「うん…それで?まだ聞いてなかったけど、千影服を作りたいんでしょ。」

まだ、そこまで話してなかったのに。
これもまた母さんとゆう存在だからか!?とか勝手に想像してしまう。

「うん…ダンスチームの友達から貰った雑誌見たんだ。その服、高すぎてそれなら作ってみようって…」

「なるほどね。実は掃除機かけに部屋に入った時、見ちゃったんだよね。
スケッチブック広げたままだったでしょ?」

「しまった!はずっ!まだ駄作なのにっ!」

最近ちょこちょこと、作りたい服のデザイン画を描いていたのだ。いざ、親に見られると少し照れくさい。

「そう?絵は拙かったけど、
デザインのこだわりはしっかり感じたわよ?
千影の"好き"なモノが詰まってた。」

「……っっ!///」

胸の奥がくすぐったくて、
だけど、暖かくて……。

仕事で普段忙しいのに、ちゃんとボク自身をしっかりと見てくれているのが嬉しくて
ボクは母さんの前で泣きそうになった。

「ピンポーーーン…」

家の呼び鈴が鳴ったと同時に、
玄関の外が騒がしい気がした。

「……来たわね。ふふっ。」

「啓介たちだ…。」

ワイワイとダンスチームの3人の元気な声が聞こえて、ボクは母さんを連れて玄関のドアを開けた。

「千影!誕生日おめでとーう!」

3人がクラッカーを鳴らして祝いの言葉をハモった。

「…ありがとう。皆、入って?」

「「お邪魔しますー!」」

「いらっしゃい!
千影がいつもお世話になってます!」

この日の誕生日祝い。
月村家が明るくなったのは、
皆のおかげだった。

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