ボクは初恋をまだ、知らない。
高校入学初めの身体測定で、
ボクはついに身長167センチになった。

「牛乳飲んだ甲斐あったー!!」

満面の笑みで、測定機を降りてガッツポーズをすると、先生や他の女子達はびっくりしていた。

「くそ!負けた!165センチ…」

薫が悔しそうな顔で、測定機の結果を見つめてる。

「薫には負ける気しなかったけどな!」

「いいわよ!あたし胸はあるしね!」

ふふんと胸を張って威張った薫は、
最近益々女としての魅力が上がってきたと思う。

「そうだね!ボク無い方がいいし!」

「やだぁー張り合いがないーっ!」

あっけらかんとした反応のボクの背中に
薫が胸でアタックしてきた。

健康診断も終わった為、2人でその部屋を出て歩いているとふと、鏡に映ったボク。
自分の容姿を改めて見ていた。

黒髪のショートヘアだった髪は、
えりあし7センチ。少しだけ伸びた。

顔つきはあまり変わらないが、
昔より表情は明るくなったと思う。

女らしくない平たい胸は気にならないが、
なで肩は何気にコンプレックス。

小学校からどんな日もずっと自転車に乗ってきたからか、ふくらはぎの筋肉が発達していた。

ジャージを着ていたからか、
この部屋に入る直前も
白衣を着た先生に「男子はあっちです。」と言われてしまったが、そうゆうのは昔からだし慣れている。

「……イケメン角度、発見!!」

「!!?」

薫がそんなボクの顔を掴んで、
くいっと顔を捻ってきた。

薫曰く、長いアシンメトリーの前髪と
鼻筋のラインが繋がった時、イケメンに見えるらしい。

「もー!最近すぐそれする!
ボクの首、いつか折れちゃうよ!?」

「あはは!ごめんつい…」

手を離して謝ってるけど、顔が凄いにやけている。

そんなじゃれ合いをしていると、
前方から啓介と翔が歩いてきた。

「千影!薫!おっつかれさん!」

啓介はなんだか嬉しそうだ。
翔はなんでもない顔をしていて、ボクは2人の表情から結果を推測した。

「聞いて!ボク167センチだった!」

「あたし165センチで負けた。」

女子と男子で張り合おうとする無茶な戦い。

「お!千影すげー伸びたな!
俺よりはだいぶちびっ子だけど。」

啓介がボクの頭上を手で測るようにスカスカと振った。

「ちびっ子ぢゃないよ!」

「まぁ、183センチの啓介から見れば
皆小さいだろ。俺、174センチだった。」

翔は去年より1センチほど伸びたらしい。

「ついに0.5センチの壁を乗り越えたぜ!」

「啓介、そんな誇らしげに言わなくても充分でしょ。」

薫がバシッと突っ込んだ。

ボクらの隣を走ってく女の子達が、
頬を赤く染めながら、翔を目で追っていた。

中学の頃からだったけど、
近々周りが恋愛ムードでキラキラしている。

「……翔は高校でも、またモテるだろね。」

ボクは、去っていく女の子達を、
少し羨ましく思った。
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