ボクは初恋をまだ、知らない。
「千影くんもアニメ好き?!さよはねっ!」

「うんうん…っ」

告白翌日から、さよちゃんのボクへの猛アタックが始まった。
さよちゃんは思ってた以上に喋る子で、
好きなアニメの話や、自分の事を沢山話してくれた。

そんなボクらの様子を、薫が少し離れた席から眺めている。

ー以下、薫vision。ー

「薫!」
「顔怖いよ?どした?」

友達が眉間にシワを寄せていたあたしのおでこをぺちっと弾いた。

「んー。なんかこれでいいのかなぁって思って」

様子を見守るスタンスで行くつもりだけど、なんかモヤモヤしてしまう。

「千影くんのこと?」
「津田さんと仲良かったっけ?」

中学からの友達のナナと蓮があたしの机の端に座ってくる。狭くてしょーがない。

「ちょっと色々あってさ。友達になるんだと。」

「そーなんだ。」
「でも薫は苦手でしょ?
あーゆうとにかく可愛いって感じの子!」

自分からは言いたくない事を、ナナがチクチクと言ってくる。

「まぁね。」

あたしはサラッとそう言うと、ナナが耳打ちしてきた。

「津田さんって、バイらしいよ。
千影くん、狙われてんぢゃない?」

タイムリーな事を言われてドキッとした感情をなんとか眉間にシワを寄せる事で隠した。

「そ、そーなんだ。」

「そういえば、確かにあの子モテるけど付き合ってる人いるって話は聞いたこと無かったなぁ。」

「えっそうなの?!」

蓮の話を聞いて、
あたしは昨日の翔の話を思い出した。
千影を好きだったから、男の子と付き合わなかったんぢゃないか…と。

そう思うと、なんだかいてもたってもいられなくなってきた…。

モヤモヤしたものが一気に溢れだしてきて…

「えっ!?薫!?」

蓮の声が聞こえたが、あたしは止まらず。
千影とさよの間を割って入って机に手をついた。

「…か、薫?どしたの?」

「鳥羽さん…?」

あぁ、あたし今どんな顔してるだろう?
折角、日々女子力を磨いてきたつもりだったのに。
やっぱり時折、素の中の素を出さないと色々やってらんないや。

「ちょっとてめぇら、表出ろや?」

若い頃はヤンキーだったオカンの血を受け継いだあたしは、ついにそんな面を千影にまで見せてしまった。

後ろの方で蓮とナナが、
「でたー!」
「薫様、降臨しとる!」とか何とか言ってた。

千影はキョトンとしていたが、
津田さんは案の定、怯えていた。


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