ボクは初恋をまだ、知らない。
あたしは2人を、中庭まで連れ出した。
相変わらずキョトンとしてる千影の袖を掴んで、津田さんは震えていた。

「おい、気安く千影に触んな。」

一旦素が出たら止まらなくなってきたあたしは、思わずまた乱暴な口調になってしまう。

「…あの、薫?
さよちゃん怯えてるから少し落ちついて?」

なのに動じない千影にあたしは、
更にイラついてしまった。

「千影はちょっと黙ってて。
ねえ津田さんさ、バイってほんと?」

「えっ!?」

あたしがどストレートに言うと、
津田さんは可愛い顔を真っ赤に染めた。

「告白したのは知ってるのよ。
千影を想って心配してる人があたし以外にもいるんだから、ちゃんと答えてね?」

なるべく口調に気をつけて言いたい事言ってみたけど、千影はあたしの態度に少しハラハラしている。

「…さよは、確かにバイ…です。
でもっ人を好きになる事は…女も男も関係ないと思うんですっ!」

津田さんの言葉を聞いた時、わかった。

((…ボクは、女の子だからとか男の子だからこう…ってゆう考え方は、あまり好きぢゃないんだ。))

千影と、考え方が似てるのかもしれない。

「…分かった。ならもう口出さない。
怖がらせて悪かったわね。」

「あっ…薫!?」

そう言ってその場を立ち去ると、
あたしを引き止めた千影の声が聞こえたが、敢えてその時はスルーしてしまった。

1人で教室に階段を登っている時、
廊下でじゃれ合う男女のカップルを見て思った。

出来ることなら、
千影には、普通の恋愛をして欲しい…。

これから友達以上になったりするんだろうか?
そんな先の事も考えると、嫌な気持ちにしかならなかった。

「わっ!?…薫?!」

「……わっ!?」

下を向いたまま歩いてたあたしは、
廊下で巨体の背中とぶつかった。

「今、千影にノート渡そうと思って来たんだけど、あいつどこ行ったんだ?…薫??」

あたしは、啓介の厚みのある胸板に頭を寄りかからせた。

「……ごめん啓介。あたしはやっぱり、
千影達の応援できないわ…。」

啓介は、あたしの声色から何か思ったんだろう。

ポンっとでかい手が、あたしの頭を撫でてくれた。

「……分かってる。俺もそうだから。」

啓介のその言葉に、安心してしまった。

やっぱり、皆千影の普通の幸せを願っているんだって実感した。

「でもな、薫。
多分千影も俺らの気持ち気づいてるよ。」

「…そうかな?」

「何年、親友やってると思ってんだよ。」

啓介は、窓の外を眺めながらそう呟いた。

「……啓介って、千影を女として見た事ないの?」

さっきの勢いで、ついまぢモードで尋ねてしまう。

その時一瞬見せた、
啓介の切なげな表情は、
多分もう二度と見れない気がした…。

「……そういや1度だけ、あったな。」

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