ボクは初恋をまだ、知らない。
「すげぇすげぇすげぇー!!
これがコスプレイベントかぁー!?」
週末の土曜日、ボクはさよちゃんに誘われて
コスプレイベントに参加した。
こないだの"さよちゃんのお願い"とは、
この事なのだ。
「千影くん誘って良かった!
さよ、ずっと行ってみたかったんだけど
1人ぢゃ勇気出なかったから。」
「うん!誘ってくれてありがとう!
なんか衣装創作にも役立ちそうだし!」
ボクが喜ぶと、隣でニコニコしながら幸せそうに見てくれている。
ちなみにボク達も好きなアニメのコスプレをして参加したのだが、アニメ上ではカップル同士なので、ボクらも設定を合わせなきゃならない。
それがあるからか、
たまにさよちゃんがソワソワしている。
「すいません!写真撮っていいですか?」
「あっ!はい!」
戦士のコスプレをした女の子2人に声を掛けられたボク達は写真映えしそうな場所でポーズのおねだりをされてしまった。
「さよ、こんなの初めて。///」
恥ずかしそうにしつつも、頑張ってポーズを取るさよちゃんは、素直に可愛い子だなと思った。
「お兄さん!手を繋いでみて?!」
撮影してくれてた女の子2人が、
絡みまでおねだりしてきた。
「えっ!?///」
さよちゃんはそんな言葉に照れたが、
普段薫とノリで手を繋いだりしてたボクは
自然にさよちゃんの手を握ってしまった。
「こんな感じでいいですか?」
「……っっ!?///」
「おっけー!素敵です!」
「きゃー!可愛いー!」
女の子達は写真を何枚か撮った後、
お辞儀して「ありがとうございました!」と言って去って行った。
こんな経験なかなかないと楽しくなっていたボクだったが、ふと右手の温度に気付いた。
「千影くん…あの…手ぇ。///」
「あっ!ごめんっ!」
パッと離したが、その時のさよちゃんの表情を見て、現実に戻った。
「……っっ。///」
顔を真っ赤にして、繋がれていた左手をぎゅっと右手で包んでいる…。
そうだった……ボクは、さよちゃんから好意を抱かれていたんだった。
その瞬間、ボクの胸が痛んだ音がした…。