ボクは初恋をまだ、知らない。

「すげぇすげぇすげぇー!!
これがコスプレイベントかぁー!?」

週末の土曜日、ボクはさよちゃんに誘われて
コスプレイベントに参加した。

こないだの"さよちゃんのお願い"とは、
この事なのだ。

「千影くん誘って良かった!
さよ、ずっと行ってみたかったんだけど
1人ぢゃ勇気出なかったから。」

「うん!誘ってくれてありがとう!
なんか衣装創作にも役立ちそうだし!」

ボクが喜ぶと、隣でニコニコしながら幸せそうに見てくれている。

ちなみにボク達も好きなアニメのコスプレをして参加したのだが、アニメ上ではカップル同士なので、ボクらも設定を合わせなきゃならない。

それがあるからか、
たまにさよちゃんがソワソワしている。

「すいません!写真撮っていいですか?」

「あっ!はい!」

戦士のコスプレをした女の子2人に声を掛けられたボク達は写真映えしそうな場所でポーズのおねだりをされてしまった。

「さよ、こんなの初めて。///」

恥ずかしそうにしつつも、頑張ってポーズを取るさよちゃんは、素直に可愛い子だなと思った。

「お兄さん!手を繋いでみて?!」

撮影してくれてた女の子2人が、
絡みまでおねだりしてきた。

「えっ!?///」

さよちゃんはそんな言葉に照れたが、
普段薫とノリで手を繋いだりしてたボクは
自然にさよちゃんの手を握ってしまった。

「こんな感じでいいですか?」

「……っっ!?///」


「おっけー!素敵です!」

「きゃー!可愛いー!」

女の子達は写真を何枚か撮った後、
お辞儀して「ありがとうございました!」と言って去って行った。

こんな経験なかなかないと楽しくなっていたボクだったが、ふと右手の温度に気付いた。

「千影くん…あの…手ぇ。///」

「あっ!ごめんっ!」

パッと離したが、その時のさよちゃんの表情を見て、現実に戻った。

「……っっ。///」

顔を真っ赤にして、繋がれていた左手をぎゅっと右手で包んでいる…。

そうだった……ボクは、さよちゃんから好意を抱かれていたんだった。

その瞬間、ボクの胸が痛んだ音がした…。



< 25 / 106 >

この作品をシェア

pagetop