ボクは初恋をまだ、知らない。
「…なんで、千影くんも泣くの?」

「ボク…多分さよちゃんを利用したんだ。」

だめだ…涙腺が崩壊してしまった…。
さよちゃんは黙って、ボクの言葉に耳を傾けてくれている。

「ほんとはっ、男か女かどっちが恋愛対象になるか分からなくて…っ!それを知るために…ボクは。
友達からならって、曖昧な返事して…」

きっとメイクはもう、ボロボロだろう。

「ほんとにごめんなさい…。」

そんなボクの顔に、さよちゃんがハンカチをそっと当ててきた。

「…ぢゃあ、さよは千影くんの最初の第1歩になれたのかなぁ?」

「え……?」

「利用されたなんて、さよは思ってないよ。
むしろ、恋って、ほら下に心がついてるでしょ?」

なんだか、ポエマーみたいな事を言ってるが、
恋を知らないボクにとってはとても新鮮で心に響いてさえいた…。

「…さよちゃん、いい子過ぎるよっ。ぐすっ。
ボク、もしかしたら恋愛向いてないのかも」

ついに弱音まで出てしまう…。

「そんな事ないよ!あのね、千影くん?
恋って切なくて苦しい時もあるけど、
心が豊かになって、とっても楽しかったりもするんだよ!」

「心が…豊かに…?」

「さよは、千影くんを好きになって良かった!」

そう言ったさよちゃんは、
泣きながら微笑んでいた。

「うん…ボクを好きになってくれて
ありがとう。ごめんね…やっぱり、
付き合うとかは無理だ。」

やっと、きちんとさよちゃんの想いに応えられたと思った。

「うん、分かったよ。千影くんもいつか、
誰かを好きになれたらいいね。」

さよちゃんのひたむきな気持ちは、
ボクの弱い部分にそっと
手を差し伸べてくれた。

その約1ヵ月後、
「仲良くしてくれてありがとう。」
とゆう手紙を残して、
さよちゃんは引っ越して行った…。

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