ボクは初恋をまだ、知らない。
集会の場所へ行く途中の事だった。

階段のもう1つ上の階だ。
何やら騒がしく、バタバタと足音が駆けてくる。

「先生!」
「太陽先生!待ってください!」

先生達が先生を追いかけている?

「何だろう?」
「先生達が鬼ごっこ?」

ボクとるなが、上の階に繋がる階段の下から上がっていくと、
突然ボクらの視界に物凄い速さで走りくる男の人。

「わっ!?」

その男の人は、階段の手すりに駆け上がり
ボクとるなの頭上を
風をきって、飛び上がった。

「お前ら!しゃがんどけぇ!」

ボクの視界に、鮮やかなオレンジ色の髪がふわっと舞った。


「きゃあ!?」
「るな!伏せて!」

ボクがるなを庇うようにしゃがませると、
その人はボクらを飛び越えて綺麗に着地した。

「っとー。危なかった。」

「な…なんなのよ?!」

るなが心臓をバクバクさせて言う。

「るな、大丈夫?」

腰を抜かしたるなを起き上がらせると、
その人は再び階段を降りて行こうとしたが、去り際にボクらに言った。

「悪かったな!女子達!
もうすぐ集会だ!急げよ!」

「…え?」

ボクはその人を引き止めたかったが、
上の階から先生達が駆け下りてきた。

「太陽先生ー!!」
「待ってくださいってー!!」

「やべっ!ぢゃあな!」

バタバタと先生達が"太陽先生"と呼ばれるその男の人を追いかけていく…。

「びっくりしたぁ。
あの人が太陽先生なんだ…」

るながボクの腕にしがみついたまま。
脚がまだプルプルしている。

「…あの人、凄いオレンジの髪だったね」

「そう!デザイン科の講師の、
太陽先生!あたし達の先生だよ!」

「あの人が…へぇ。
とても先生には見えなかったや。」

教師とは思えない程明るく染まったあのオレンジ色の髪が、まだボクの視界に残像を残している。

それに、あの人…

ボクをすぐに女だと気づいたみたいだ。

「きゃあっもう10分前!
つっきー急ごう!?」

「うんっ!!足元気をつけてね」

ボクらは集会が始まる第三教室へと急いだ。

これが、ボクと太陽先生の
出逢いだった…。












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