ボクは初恋をまだ、知らない。
ボクのデザイン画を見た瞬間、
太陽先生の顔色が変わった…。

「太陽先生?…どうし…え?!」

驚いたような太陽先生の目から、
涙が零れていた。

ボクは、訳がわからなかったけれど、
その涙を綺麗だと思った…。

「あ、悪い。いや、違うんだ。」

涙に気づいた太陽先生は、袖で拭うと
ボクのデザイン画を改めて見つめた。

「…デザイン画見て泣いた人、初めてです。」

「…もう言うな。少し、懐かしく思った」

「懐かしい?」

太陽先生のその感想に、ボクは興味を持った。

「あぁ。…バーミリオンのビビッドなカラーでよくここまで優しい印象に出来たな。
俺はこのデザイン画が形になるのを楽しみにしている。」

「!!…太陽先生、的確にボクのデザインの伝えたいもの捉えてくれましたね。」

見かけは派手な髪色をした、チャラチャラした印象の人だが、キチンとした目を持っているようだ。

伊達に先生をやってる訳ぢゃないんだなと思った。

「…まぁ、一応これでもコンテストの審査員もしてきた経験があるからな。」

「そうなんですね。」

「ぢゃあ、そろそろ職室戻るわ。
月村、気をつけて帰れよ?」

太陽先生はそう言って、資料を持った手を振って教室を出ようとした。

「あ!太陽先生、待ってください!」

「なんだ?」

ボクはこの機会に先日の事を聞いてみたかった。

「初めて会った日、どうしてボクの事
女だって分かったんですか?」

太陽先生はキョトンとした表情をすると、少し前髪をポリポリと掻いて言った。

「…むしろ、どう見たら男に見えるんだ?」

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