ボクは初恋をまだ、知らない。
家に帰ってから、ご飯よりも着替える事よりも先に、貰った雑誌を眺めた。

改めて表紙を見てみると、海外向けとゆうか、
どれもモデルさんがほとんど外国人のよう。
ページをめくる度に、
ワクワクと気分が高揚する。

「凄い…日本人が着そうな服も多いけど、
結構個性的なデザインの服も多いなぁ。」

教室で見たページを見ると、
やっぱり凄く格好良い。

「げっ!?…5万4000円!?
こんなにするものなのかぁ!さすが海外雑誌…」

スカートの値段を見ると、ガキンチョの自分のお小遣いでは到底手の届かない金額に溜息が出る。
むしろしばらく絨毯の上で悶えたくらいだ。

結局ボクは母さんに夕飯の合図を送られるまで、
夢中で雑誌を呼んでいた。

季節は雪が降る、2月の冬。
誕生日も近かった為にボクは母さんに頼み事をした。

「あのさ、自分から言うのもなんだけど…」

「なぁに?もしや欲しいプレゼント決まった?」

ボクがあまりにも楽しげに言ったから、
そんな事だろうと母さんに察されていた。

「うん!ミシンが欲しい!!」

その瞬間、お茶を飲んでいた母さんがむせた。

「はぁ!?ミシン!?なんでまたそんな…
中学生らしからぬ物を…」

「お願いします!!…それからちょっと、
母さんのパッチワーク用の布地を下さい。」

「それはだめ!…まぁ、ミシンは考えてあげなくもないけどね。」

「やったぁ!決まりね!」

ボクが産まれるずっと昔から、母さんはパッチワークとゆう物を作り続けていた。

色んな柄の布地と布地を継ぎ合わさって作られたそれらは、色とりどりで唯一無二の芸術作品になる。

そんなパッチワークを作る母さんの姿をずっと見てきたボクは、何となく自分も裁縫は出来る自信があったのだ。

この時、ボクの心はうずうずと新しい感情が芽生え始めていた。

どっちつかずな真ん中の気持ち以外を知ったような気がしたんだ。
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