クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。
「きゃっ、早凪くんよ!」
「まさか教室で見られるなんて」
「いつ見ても綺麗な顔……」
先程とは打って変わって、急にざわざわと話し出す女の子たち。
教室にいる女子たちはみんな後ろを向き出して、先生に宇垣と呼ばれた男の子を見るなり、顔をうっとりさせていた。
あ、そうだ、朝、理事長室の前にある窓にもたれて眠っていた方だ。
私も思わずあの寝顔を見入ってしまったくらいだったし、やっぱりすごく人気の男の子なんだなぁと感心していると。
宇垣くんや早凪くんと呼ばれるその人は、スタスタと私の方へと向かってくるではありませんか。
え、え、え、なんで?!
寝顔を覗いたの、気づいてて怒っちゃった?!
慌てて顔を前に戻して、下を向く。
いやいやいや。彼、あんなに気持ちよさそうに寝てたんだしそれはないよね。
それに、私のすぐ後ろの席は空席。
理由がなんとなくわかった。
彼の、他の子とは違う圧倒的な特別感を漂わせるオーラ。
きっと、後ろは彼の特等席なんだろう。
「……この香り」
後ろから、ボソッと小さく何か言う声がした。