クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。

「後悔？」


「あぁ、弟が高校合格した時に、お祝いにケーキを作って欲しいって母親に頼まれて。でも、その時の俺は、高校卒業しても家族の必要のためにバイト掛け持ちしてて実家暮らしのままで。仕事の疲れとか焦りとか、周りの奴らはどんどん夢を見つけてそれに向けて頑張ってるのに、俺はなにも出来ないって歯がゆさで……母親に『そんな暇あるわけないだろ』ってきつく当たってしまって」


時折、止まりながら、それでもゆっくりと自分の話をしてくれる明人さんに、嬉しい気持ちと、切ない気持ちが入り混じる。


「後から思い返したら、昔俺が、パティシエもシェフもどっちもできる料理人になるんだって言ってた俺の言葉を、ずっと覚えてて、それであんなこと言ってくれたんじゃないかって、それなのに俺……」


それから口をつぐんだ明人さんは、顔を上に上げて、それから正面を向いてブンブンと顔を振った。


「その次の日、母親、事故で死んだんだ」


「……っ、」