俺の彼女は、キスができない。
五時間目の後。
家庭科室に向かっていた途中。

「ねぇ、どうして、いつも一緒じゃないの?」
と話しかけてきたのは、友達の悠莉。
悠莉は、首を傾げてる。
「あぁ、うん。それはね、縛りたくないの。無理矢理っていうのも、ダメだから」
と言うと、悠莉はため息をついた。
「アンタ達、よく我慢できるね。私だったら、ずっと傍にいるよー?尊敬だよー」
「えへへ。なんか、ありがと。でも、私だって、独占したいよ」
うん。独占、したい。
そう思ったとき、角を曲がって、家庭科室に入った。
少し歩いて、自分の席に座る。
悠莉とは席が近いから、ここでも悠莉と話す。
「じゃあ、すればじゃない。独占♪」
と大声で言った。
「ちょ!そんな大声でっ!」
私は、小声で言う。
皆の視線が集まる。
うぎゃぁぁ!聞かないでぇぇ!
特に!ゆっくんは聞かないでぇぇ!

だけど、
「どうしたんだよ。何なのさ、独占って」
と近くの席に座っていたゆっくんが、話しかけてきた。
「そ、それは……」
私は、ドキドキ。
悠莉は、ニヤニヤ。
ゆっくんは、余裕って顔。
なんで、そんなにドキドキしないの。
もう、ズルい。
と思って、上目遣いでゆっくんを見る。

すると、ゆっくんは、
「あ、いや、なんでもない。ちょっとトイレ行ってくるわ」
と赤い顔をして、去っていった。
私は、悠莉を見た。
悠莉は、行ってきなと言いたげな顔をしている。
「ちょっと、忘れ物したから!取ってくるね!」
私は、思いっきり走った。

「やっぱり、幸せ者だなぁ。妬くねぇ。ふふっ♪」
なんて、悠莉の言葉が聞こえなかったけど。
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