俺の彼女は、キスができない。
キーンコーン、カーンコーン。
放課後になった。
皆は、帰りの支度をしてる。
そんな中で、私と悠莉は話していた。
「え…?マジで、ヤったの?柚子」
と皆には聞こえないよう、小声で話す悠莉。
私は、その言葉にビクッと反応する。
「するわけないでしょ…!!クビキスだよ!クビキス!」
私も、小声で話す。
全く、悠莉は何を言って。
「分かったって。でもさ、私達、高校生だよ?お年頃じゃないの?」
「まぁ、確かに」
「それにさ、アンタ達、付き合って結構経つんでしょ?そろそろじゃないかな」
「うーん」
それも、そうだ。
ゆっくんとは、中1からの付き合い。
そろそろ、かな。
でも、ゆっくんから
『ヤる?』
みたいなことは、全くない。
聞かされたこともないし。
なんて、積極的に考えると、顔が真っ赤に染まる。
私は、一体何を考えて!!
我に返らせ、せっせと帰りの支度をし始めた。


「さようならー」
男子は今日もほぼ挨拶をせず、早々に立ち去っていく。
ぶっきらぼうな声。
なんて思いながら、教室の扉付近を見ると。
あれ?ゆっくん?
確かに、ゆっくんがいた。
珍しいな。ゆっくんが来てくれるなんて。
通学カバンを手に取り、ゆっくんの元へ駆け寄った。
「ゆっくん、どうしたの?珍しいね。うちのクラスに来るなんて」
さっき、あんな話をしてたせいで、動揺する。
なんとか、バレてないけど。
「あ、ちょっとな。ほら、帰るぞ」
と言い、早々に歩く。
「ちょっと、待ってよ」
急いで歩き、ゆっくんの隣に並ぶ。

角を曲がったところで、ゆっくんが話しかけてくる。
「お前、全然だな」
はい?全然って、どういう意味なの?
「え?」
階段を下りながら、そう言う。
「いや、なんでも」
と言いかけたとき。


「キャ!」



(いきなりですが、ここから、ゆっくん目線に変わります)





ゆっちゃんが階段を踏み外した。
柚子の体が後ろへと倒れていく。
「ゆっ………くん……」
なんて、俺を呼ぶ声が聞こえる。
「ゆ………ず…………」
その呼びかけに、答える。
だけど。


ドサッ!


「キャー!!奥原さーん!!」
と女子達の悲鳴が階段に響いた。
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