俺の彼女は、キスができない。
あれ?
ここは、病室?
私がいた病室?

天井が見える。
ベットの上にいる。
そっか。私、倒れたんだ。
あ、お母さんも来てる。
ゆっくんも、いる。

え?ゆっくん?
私、記憶が消えたはずじゃ。
そのとき、
「柚子!起きた!」
母が起きた私に、気づいた。
「ゆっちゃん!良かった!」
ゆっちゃん?
ゆっくんが、そう呼んでる。
その名で、呼んじゃダメでしょ?
私、君のことは、知らないはず。
あれ?
分かる。ゆっくんだ。
知ってる。私の大好きなゆっくんだ。
「私、なんで?ゆっくん」
と言うと、ゆっくんは涙を浮かべた。
「お前………バカ……。心配させやがって」
ゆっくんは、目をこすってる。
「良かった……」
お母さんは、もう涙が溢れていた。

目を覚ました私は、記憶を取り戻した。全てを覚えている。
図書室であったことや、私がゆっくんをひき止めたこと。

あと、
ゆっくんが、私にキスしたことも。


ダメって、言った。
やっちゃいけないって。
約束もした。キスはしないって。

でも、君はその約束を破った。

ひどい。
ひどいよ、ゆっくん。

ゆっくんなんて。

ゆっくんなんて。



だいっきらい。




私たち、
おしまいだ。

もう君の隣には、

いられない。






さようなら。
ゆっくん。
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