俺の彼女は、キスができない。
昼休み。
俺は、屋上にいた。
珍しく、友達の#白川 翔__しらかわ しょう__#と訪れていた。

「なぁ、翔」
「ん?」
ープシュッ!ー
翔は、自販機で買ったコーラを開けながら、そう言った。
「キスしたこと、あるか?」
と聞くと、翔がコーラを喉につまらした。
「げほっ!なんてこと、聞いてんだよ!」
「いいから、答えて!」
と俺も圧を出すと、翔はため息をしてから、
「お前、何かあったな?」
と言った。
俺は、ドキッとした。
見抜かれてたか。
「あったよ。キスした」
と言うと、翔は一瞬止まってから、
「えぇ!アイツと!?キスするなって、約束したアイツとか!?」
「うっせーな。そうだよ」
「マジか。じゃ、お前ら、今ってヤバイことに?」
「いや、それは過ぎたから。それより、何か知ってねーか?柚子がどうしてキスできないのか」
俺は、真剣な顔で尋ねる。
「知らねーけど。あ、女子達が話してたんだけど、アイツ。病気にかかってるみたいだぞ?」
俺は、その言葉を聞いた瞬間、ドキッとした。

は?
アイツが。
病気?

ウソ、だよな。
アイツが、そんな。
病気とか、ウソに決まってる。
「どうも、虫歯の病気でよ。治せないみたいだぞ?アイツ、諦めてんだろうぜ」

治せない?
諦めてる?
「ちょっと行ってくる」
「おい!どこに行くんだよ!」
そんな。
アイツ、ずっと病気に苦しめられてたのか?
それに、俺は気づきもしなかったのか?
俺じゃ、ダメなのかもしれない。
でも。言ってくれよ!
どうして、俺に黙って。
どうしてだよ!
頼ってくれよ。
バカ柚子。

俺は、無我夢中で走った。
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