俺の彼女は、キスができない。
「はーい!皆さん、この電車に乗ってくださーい!」
あっという間に、校外学習が終わり、帰りの電車。
なんだか、今日はイヤな思い出しかない。
電車の扉にもたれて、黄昏た。
山崎さんは、私の苦手な人。というか、嫌い。まぁ、ああいう女子は、よくいるもの。別に慣れてる。山崎さんみたいな人は、中学時代にもいた。
山崎さんには、関わらないほうがいいかもしれない。それに、山崎さんを利用しよう。柚希を、山崎さんに譲るのだ。そしたら、忘れることが出来る。
と思ったとき、隣にスッと中原くんが来た。
「手、つなご」
私の耳元で、小声でそう言った。そして、私たちは、後ろで手を繋いだ。皆には、隠すように。
二人だけの秘密みたいで、どこか嬉しくて、どこかイヤで。不思議な感情にみまわれた。


私は、この先、どうなるんだろう。
もしかしたら、中原くんとずっと一緒にいるかもしれない。
もしかしたら、中原くんとは別れるかもしれない。
でも、しばらくは中原くんの隣にいよう。
そのときの私は、青々とした木々を見ながら、そんなことを考えていた。
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