明日も明後日も。
「……なんで……」
「……俺、明さんのこと、すげえ良い人なんだろうなって思ってたんですよ」
「でも……バイトの人たちは、冷たい人だって……」
「そりゃ、あんな話し方じゃそう思いますよっ。……けど俺、どんな言い方でも間違ったこと言われた事ないし。それに、よく彼氏と笑いながら歩く明さん見てたんで」
悠人くんの言葉に、思わず顔が熱くなる。
視線を逸らすと、悠人くんは小さく笑った気がした。
「ああこの人、自分の出し方を知らないんだなって。冷たいんじゃなくて、知らないんだなって」
「そ、そんなことないよ。楽しくないなら、笑う必要がないなら、って……思う、よ……」
「うん。だからさ、明さん知らないっしょ? 俺らのこと」
「え……」
「俺らがどんなこと好きとか、どんな奴らなのかって。明さん、未だに全員『さん』か『くん』付けてるし! 他はみんなあだ名か呼び捨てなのにさ」
「あ……」
「たぶん明さん、彼氏のことしか見えてなかったんす。だから、少しずつ、視野広げてみたらどうっすか?」
「年下が偉そうですけど」と、苦笑いを零す悠人くん。
私は今までの自分を、少しずつ思い出す。
バイトが終わったら、次の休日はどうするか。
全部全部、隆が一番だった……。
「……どうやって、広げればいい……?」
「ん?」
「私、その……大勢で遊んだりって、あんまり得意じゃなくて……」
「……じゃあ」
悠人くんは、優しく笑って。
「まずは、俺を知ってみませんか?」
その笑顔が、声が、とても優しくて。
ぽっかり空いた心に、すとんとハマった気がした。
彼氏に振られた翌日に、他の男の人を知ろうと思うなんて、隆が知ったら『ビッチ』だとか言うかもしれない。けれど、それでも良いと……思ってしまった。
「……うん、悠人くんのこと、教えて」
ああ、こんなこと隆が知ったら、ヤキモチやくかも。
そうなったら……。
そんなことを思いながら、私は悠人くんと連絡先を交換した。