だから何ですか?Ⅲ
「・・・行くか、」
「・・・えっ?」
ぽつりと落とされた言葉に意識を向けた時にはすでにソファからその身を立ち上げている大道寺さんの姿が映る。
間抜けにも『行く』という目的や言葉の意味が分からないと疑問に眉根を寄せてしまって、そんな俺をスーツの上着を羽織りながら捉え、
「高城のドールハウスだ」
その一言で理解し納得する。
むしろ今の話の流れだ、理解出来ずにいた自分の方がおかしいと言えたのかもしれない。
俺に答えの一言だけ告げた姿の動きは早く、さっきまで『面倒だ』とぼやいて座り込んでいた人間とは思えない。
上着を羽織りながらデスクに向かい、慣れた感じに車を手配したかと思えば無駄のない流れのままに部屋の入り口へ。
そうして扉の前に立ちようやく振り返った姿が、未だソファで呆けている俺を捉えて方眉を上げた。
「行かないのか?」
「っ・・・あ、行きます!」
改めての最終確認の様な問いかけに、弾かれた様に立ち上がると小走りで部屋の入り口へ向かう。
そんな俺を待たずに扉を開いて廊下に進む姿はマイペース。
その後ろ姿を追って、なんだか隣は気が引けたから若干斜め後ろについて同行する。