だから何ですか?Ⅲ
そんな俺にゆっくりと移り向けられる緑の双眸はどこか酷く高揚と光って見えて。
まるで至極愉快だと言いたげな瞳の揺れとそれを示す弧を描いた口元と。
何でだろう?
この時を待っていたと言わんばかり?
初めてこの人の感情的な一面を見たような気がする。
「お前の事だよ」
「・・・えっ?」
「逆鱗も弱点も」
「あの・・・」
「高城の馬鹿はお前が亜豆の弱点だと思い込んでいる。お前を突くことでより亜豆が従順なお人形として自分の玩具になると考え違いをした。・・・それが誤算であり俺としてはこの上なく愉快な展開になった」
「大道寺さん?」
「俺はね、自分のモノを害される事だけは絶対に許さないんだよ」
「っ・・・・」
ああ、鳥肌の再来。
でも、さっきの比ではない。
その双眸が俺を的として物を語っているわけでないのがせめてもの救い?
口元は笑っているのに、目元もそれに合わせて形を変えているのに、その目の色や鋭さだけは狂気を帯びている。
「あいつは・・・俺の亜豆を壊した。じゃあ・・・俺があいつの玩具を壊しても文句は言えないだろう?」
人の笑顔を恐いと思った事は多々ある。
それでも、こんなに芯から恐怖を感じたのは初めてだと断言できる。
笑顔という形の狂気と威圧。
この人は・・・敵に回してはいけない人だと芯に刻まれ無意識の支配下に自分の身を置く。