だから何ですか?Ⅲ
そんな俺の畏怖に気が付いたのか、スッとその笑みから狂気を減少させると視線も前に戻してしまって、
「すまないな」
「いえ・・・、」
「積年の恨みを大っぴらにし返せると思ったら実に愉快でな」
「っ・・・恐いっす、大道寺さん」
「恐いのは亜豆の方だと思うぞ」
「えっ?」
「俺の狂気に畏怖を感じるのが普通。扱いきれないと皆当たり前に俺の隣どころか上に出ようとなんかしない」
「・・・・」
「そんな俺の隣に当たり前に並んで、場合によって上から物を言って俺を難なく振り回しにくる」
「・・・・そんな亜豆だから・・・特別ですか?」
「・・・あいつは・・・振り回すにしても自分の欲求ではそれをしないから。自分の利益の為に俺を使おうとはしないから・・・だから好きだ」
この人がはっきりと『好きだ』というのだからよっぽどなんだろう。
さっきから『俺の亜豆』とか『好きだ』とか、妬いてもいいような言葉を発せられているのに微塵も嫉妬の感情は疼かない。
ただ・・・亜豆は凄い奴だな。
この人の信頼すら勝ち得ている。
好意すら得ている。
そんな亜豆に好かれているというのはやはり凄い事なんだろうか。