だから何ですか?Ⅲ
しらじらしい。
触れられた瞬間から小さく熱を持っていた負の感情が一瞬で心に燃え上がった気がする。
あの声で昔の様に名を呼ばれた瞬間にその名前を捨て去りたくなった。
また、亜豆凛生をやめたくなった。
振り返り際に垣間見たのはモノクロの世界だ。
それでもその記憶の果てに印象強く残る唯一の人影に現実に引き戻されて色彩に満ちたリアルを映しこんで偽りの愛想と対峙した。
「ああ、やっぱり・・・亜豆だ」
「・・・お久しぶりです。高城社長」
「ハハッ、同級生なんだからそんな堅苦しい肩書で呼ばないでよ。俺と亜豆の仲でしょう?」
肌に爪を立てて掻きむしりたくなる。
それほどに駆け上る悪寒に嫌悪に満ちて、それでも表情には出さず内部を焼け焦がらせながら感情を飲み込んだ。
俺と亜豆の仲?
どんな?
王様と奴隷?
飼い主とペット?
子供と玩具?
何にせよ・・・私は彼にとって支配される対象であるのだ。
向けてくる眼差しは昔と一緒。
過去の時間を切り離して清算し興味がないというような眼差しではない。
むしろ・・・壊してなくしたと思っていた玩具を思わぬ場所で見つけた。
そんな嬉々とした子供の残酷な歓喜の表情だ。
次は・・・どう遊んで壊してやろうかとワクワクした。