だから何ですか?Ⅲ
あなたに畏怖して従う人形。
そう思い込んでくれている方がどこまでも私に有利で有効であるのだ。
「・・・そろそろ戻ったら?この会の主役がいつまでもしがない秘書捕まえてても仕方ないでしょう?」
言いながら賑やかな会場の中央に視線を走らせて、今でも媚びを売りたい他社の人間が今か今かとこの人の意識を待っている。
それを示し自分はくるりとその身を返し始めて当初の扉の方へ。
彼としては逃げるように見えた?
私の都合よく。
「菱塚の秘書をしているみたいだね」
「・・・・・」
「あそこは評判がいい。常に経営も上昇しているし、社長も会社も他人からの覚えが良いって」
「・・・・・」
「どうだろう?・・・ウチに移る気はない?今の雇用条件より良い待遇で迎えてあげるよ」
ピタリと止めた足と僅かに体を捻り戻して。
そうして捉えるのは提案を口にするくせに『来い』と言わんばかりに強気の笑み。
その瞬間に・・・【諦め】と【覚悟】の浮上。
薄々・・・いや、ほぼ確信的に分かっていたじゃない。
こうなるのだと。
彼の玩具になり果てる時間の再来になるのだと。