だから何ですか?Ⅲ
きっと・・・すでに彼の頭では性質の悪いガキの思想が巡らせられている。
どこまでもこちらを精神的に攻めこもうとする嫌がらせが。
決して自分では手を下さない悪質な苛めの思考が。
今ここでYESと答えようがNOと答えようが現在(いま)の私の身辺をどこまでも洗いざらい探りに探って、決して私ではなく私の大切に思う物をチクリチクリと針で突き始める。
私にそれを見せつけて、自分が与えられるより痛い痛みを心に打ち付けられる。
きっと・・・そうなる。
「移る気はない」
「・・・・そうか、でも・・・返事はまだ待ってるよ。気が変わったら・・・・ここに電話して」
『逃がさない』の念押し。
スーツの内ポケットから携帯の番号まで記載された名刺を取りだすと私の手にそれを預ける。
最後の最後まで舞い戻った玩具に嬉々とした悪ガキの笑み。
胸糞悪い。
それでも名刺を預けると颯爽と笑顔で離れて主役に戻り様々な人間に取り囲まれる姿。
私に向けるのとは異なる愛想で周りを偽り売り込む姿にはさすがに呆れと非難で目を細め息を吐いてしまった。
そんな瞬間、不意に背後から思わぬ力に強制的に引かれ、驚愕のまま振り返れば視界に映り込むのは荒んだ心が一瞬で緩和する後ろ姿。