だから何ですか?Ⅲ
言葉にならない葛藤を表情に目に、ストンと私の肩に頭を預けた彼の優しい事。
慰める側と慰められる側が逆転してしまっているこの状態。
綺麗に整えられている髪を崩さぬようにそっと頭をなで、私の代わりに悶えてくれている姿を労わるように抱きしめる。
私の腕に力が入れば同じだけ抱き寄せられて、その度にファンデーションが高そうなスーツにつかないかと注意した。
「・・・雨月くん、こんなしっかり抱きしめられたら惚れちゃうよ?」
「・・・・俺なんかに惚れるな。お前は、」
「あ、長い付き合いの中で初めてその本心零したね」
「・・・・・」
『どういう意味だ?』が正解の視線の対峙?
それとも『何で分かった?』と言いたい?
どちらにせよ少し驚愕交じりの目の揺れにしてやったりと笑って見せて彼の唇を指の腹で一撫で。
「雨月君はずっと私に恋してる」
「・・・・・」
「でも、雨月君の中ではすでに絶対的不動の一番の人がいて、天秤にかけてしまえばあっさりと私の手を離すのが自分で分かってる」
「・・・・・」
「でも、私への想いも本物であるから、そんな事を私にしたくもないし・・・したら・・・壊れそうな程後悔する。・・・違う?」
違うかと問いかけてはいるけれど答えはすでに見えているのだ。
もうずっと長い事。
私は決して実をつけない感情の温かい部分だけを与えられて守られてきていたんだ。